「仕事」を入り口にしたら、社会の課題が見えてきた!
「将来、何になりたい?」高校生になると、進路について考える機会が増えます。ただ、知らない仕事がたくさんある中で、いきなり将来の仕事を決めるのは難しいものです。
そこで、おしごと年鑑編集部は、「仕事」を入り口に、高校生が社会課題や自分が探究したい問いへと視野を広げるワークショップを、8月26日に佼成学園女子高等学校で実施しました。同校が放課後や長期休みに開催し、生き方やキャリアを多面的に考える機会を提供する講座「ふみらぼ」を受講する1、2年生、計41人が参加しました。
- 実践校
- 佼成学園女子高等学校
- 学年
- 高校1・2年生 計41人
- 枠組み
- 放課後や長期休みに開催する講座「ふみらぼ」
- 時間
- 80分
- 使った教材
- 「おしごと年鑑」、「おしごとはくぶつかん」(ウェブ版)ほか
まずはゴールを設定
高1、高2に分かれ、それぞれ80分ずつ行ったワークショップでは、2つのゴールを設定しました。
① 自分と世の中が「誰かの仕事」でつながっていることに気づくこと。
② 自分がこれから深めたい「問い」を見つけること。
「なりたい仕事」じゃなくていい。まずは「気になる」を探す
最初のミッションは、『おしごと年鑑』から気になる仕事を二つ見つけること。「将来なりたい仕事」でなくてもよく、「なじみがある」「意外だった」「全然知らなかった」「ちょっと違和感がある」といった小さな引っかかりも、立派な探究の入り口です。
「この間、TikTok見てたら、卸売市場で働いている人の動画が流れてきたんだ」。「私、ここのお菓子、好きなんだよね」。
生徒たちは思い思いにページをめくって、気になる仕事を探していきました。
もし自分が、この会社の経営者だったら?
次は、選んだ仕事や会社を取り巻く課題を、4つの観点で考えていきました。
「その会社は何を提供している?」「世の中にどう役立っている?」
「その会社の心配事は?」「長期的にどんな対応が必要?」
たとえば、建設会社に建設機械をレンタルする「株式会社アクティオ」。各現場に合った機械を貸し出すため、工事業者は効率よく作業を進められます。では、自分がアクティオの経営者だったら、将来どんなことが心配でしょう?
建設機械を操作する熟練の技術者の不足。人口減少が進む地域で、道路や橋などのインフラをどう維持するかという問題。「建設機械のレンタル」という仕事から、人口減少、人手不足、地方のインフラ維持、ロボットや遠隔操作による省力化など、さまざまなテーマが浮かび上がります。仕事について調べることが、いつの間にか社会課題を考えることにもつながっていきました。
回転ずしから「温暖化」「人口減少」「国際情勢」まで?
ここからはグループワーク。それぞれが見つけた課題を持ち寄り、班で一つ、掘り下げたいテーマを選びます。ここでも、一つの方向からだけ考えないことがポイントです。
たとえば、回転ずしチェーンの仕事。お寿司や和食を提供する仕事は、温暖化で魚の漁獲量や米の収量が不安定になると、打撃を受けそうです。漁師や農家の高齢化、人手不足もあります。和食人気で海外の店舗が増えれば、食材の品質管理やスタッフ教育も課題になるでしょう。さらに国際紛争で物流が滞れば、様々な物品の入手が困難になります。
一皿のお寿司から、気候変動、一次産業の担い手不足、物流、国際情勢までつながっている。生徒たちは、会社、取引先、消費者など、さまざまな立場から一つの仕事を取り巻く社会課題について考えていきました。
「2040年までに、私たちならこうする」
課題が見えたところで、次のミッションです。「みなさんが社会の中核を担う2040年までに、その課題をどう改善・解決する?」。今ある取り組みを発展させてもOK。別の企業のサービスと組み合わせてもOK。新しい方法を考えてもOK。ただ、「AIで解決する」で終わらせず、AIをどこでどう使うのかまで考えます。
単に「こんな未来になったらいいな」とアイデアを出すだけでなく、実現するための条件や、異なる立場の人への影響まで考えることに挑戦しました。
「私たちならこうする」を3分でプレゼン!
最後は、各班が課題と、解決のために考えたアイデアを3分間で発表しました。
聞く側にも、「一番気になった他の班のテーマ」を一つあげるというお題が出されました。ほかの班の視点を学ぶことで、「そんな問題もあるんだ」「ここをもっと知りたい」と、自分の関心をさらに広げることにつながるのです。
貴金属の会社を選んだ班は、産業用製品に含まれる貴金属のリサイクル促進のため、「地域での回収を強化し、義務教育でもこのテーマを取り上げるなど、国民全体への意識啓発が必要では」と訴えました。
カラオケの会社を取り上げた班は、少子高齢化をふまえて「『カラオケ=若者の遊び場』という概念を変えて、高齢者施設へのカラオケ機器設置や、積極的な海外展開を検討するとよいのでは」と提案しました。
企業の人も、一緒に考える
ワークショップには、『おしごと年鑑』に登場する企業・団体から、アクティオ、発泡スチレンシート工業会、キリンビバレッジの皆さんも参加しました。生徒と一緒に考え、現場を知る「先輩」として助言をすることにより、高校生にとって普段は遠い企業や団体の仕事が、徐々に身近なものになっていきました。
最後に残ったのは「答え」ではなく「問い」
ワークショップの最後は、もう一度個人で考える時間です。高校1年生が書くのは、「私は、____について、もっと調べてみたいと思った。」という一文。
仕事について知ったことをふまえ、自分の探究テーマも見つけます。

高校2年生は、さらに大学での学びへつなげます。
「私は__という問題に関心がある。 特に__を明らかにしたい。 そのため、大学では__について学びたい。」
という「志望理由書の3行のタネ」を考えました。仕事から社会課題へ。社会課題から自分の探究テーマへ。そして、その「問い」から大学で学びたいことへ。進路を「職業名」や「大学名」から考えるのとは異なるアプローチです。
「何になりたい?」の前に、「何を知りたい?」
今回のワークショップの狙いは、仕事を入り口に想像力をめぐらせ、仕事の向こう側にある社会の課題を考えてみること。そして、「自分は、何が気になるんだろう?」「もっと知りたいことは?」と、問いを立てることです。
生徒らが記入した振り返りシートには「社会課題から考えるのではなく、自分が気になることが社会課題につながっていることが分かった」「自分が社長だったらという、普段考えたことのない視点で会社を見ると、人口減少や気象問題、国際情勢まで、幅広く見ていく必要があるのだなと知れて良かった」といったコメントが並びました。
教頭で、進路指導を統括する西村準吉先生は最後に、「このシートは今後、大学の志望理由書を書くときに必ず役に立ちます。今日考えた問いを、今後の高校生活の中で更に深めていってください」と生徒たちに呼びかけました。