ミンククジラのお母さんは、子育て中エサを食べないってホント？
おしごと年鑑
｢知る｣｢学ぶ｣｢楽しむ｣をかなえるお仕事
2019年度
日本の近海にやってくるミンククジラたちについて、DNA研究でわかったことを日本鯨類研究所に教えてもらったよ。
ミンククジラや回遊するクジラの多くは、
ほとんどエサを食べずに子育てしています。
太平洋側のクジラのルート （太い線＝大人、細い線＝子供）
日本海側のクジラのルート （大人と子供）
ミンククジラのような、季節によってエサを求めて回遊するクジラは、夏はエサのたくさんある冷たい海で、エサを食べて太り、冬は暖かい南の海で子供を産み育てます。お母さんクジラは、ほとんどエサを食べずに子育てをします。そして次の夏が近づくと、エサのある北の海に向かって、再び北へ北へと移動します。
太平洋側にいるミンククジラたちは、エサを求めて北の海に向かう時は、痩せてお腹をすかせたお母さんクジラが先に出発し、その後をお父さんクジラが追いかけます。子どものクジラたちは、波が穏やかで危険の少ない沿岸に近い場所を、ゆっくり移動します。
クジラのお母さんって、大変なのねー
日本近海に来るミンククジラは
東と西で違っていた！
日本の近海には、ミンククジラをはじめ、ナガスクジラやザトウクジラなど、たくさんのクジラがやって来ます。
日本近海に回遊するミンククジラは、主に太平洋側と日本海側に分かれて、二つの集団をつくっています。どちらのミンククジラも、見た目は同じに見えますが、じつは二つの集団は違う遺伝子を持っていることがわかりました。
クジラの違いはDNA検査でわかる！
人間だけではなく、クジラもそれぞれ違うDNAを持っています。クジラもDNA検査を行うことで、どの仲間に入るのか、知ることができます。
クジラのDNA検査は、まずクジラを捕獲して、表皮や筋肉などの組織を取り出します。そして、取り出した組織の細胞を分解し、不要な物を取り除いて、必要なDNAを抽出します。これにエタノールを入れると、DNAが繊維状になって見えます。このクジラのDNAを専用の機械にかけると、機械が自動的に情報を読み取り、DNAに刻まれた情報を判定します。これによって、捕獲したクジラがどの仲間に入るのかがわかるのです。
▲白い糸状になって見えるクジラのDNA
これがクジラのDNAだ！
海の生態系を守る！
海の中に生息する生き物は、わたしたちにとってどれも貴重な資源です。海の生態系は、食物連鎖のバランスを保つことで守られます。食物連鎖の頂点にいるクジラは、季節や場所によって異なる、さまざまな海の生き物をエサにしています。そこで、わたしたちの研究所では、クジラの調査を通して海の生態系を解明し、クジラを減らすことなく利用できる状態でいることを目指しています。
1 クジラの目
目玉の水晶体から年齢がわかる！
2 耳アカ
耳アカの年輪から年齢がわかる！
3 脂皮の厚み計測
脂皮の厚みから栄養状態がわかる！
4 体重計測
体長や体重、性別、子どもがいるかなどがわかる！
5 クジラの歯
歯のあるクジラは、歯に刻まれた年輪から年齢がわかる！
年輪が刻まれた歯の断面
6 採血
血液に含まれる成分からクジラの健康状態がわかる！
7 胃の内容物を調査
胃の内容物から食べたエサの種類と量がわかる！
こんな所でクジラの調査・研究を行っています
クジラの調査や研究は、大小の調査船でクジラのいる海域に行って行われています。
調査の方法は、双眼鏡などを使って、目で見て種類や数を調べる方法と、クジラを捕まえて体長や体重を測ったり、体の中の様子を調べたりする方法があります。
クジラの遺伝子（DNA）の研究を行う仕事です
一般財団法人日本鯨類研究所
調査研究部 後藤睦夫さん
みなさんはお父さんやお母さんに似ていると言われたことはありませんか？ お父さんとお母さんの特徴を受け継ぐことを遺伝といい、そのもとになるのが遺伝子（DNA）です。クジラも人間と同じ哺乳類なのでDNAを持っています。DNAは表皮や筋肉からだけではなく、骨や鯨の缶詰などからも取り出すことができ、クジラのDNAを細かく調べることによって、クジラの種類や、いつ捕れたか、どこで捕れたかなどもわかります。 クジラの研究をしていると、約5カ月間の南極での調査に参加したり、外国に行って会議に参加したり、また、外国の研究者と一緒に研究したりする機会もあり、普通の人では経験できないような多くのことを学ぶことができます。将来、皆さんの中から我々の仲間がたくさん増えることを期待しています。
DNAの研究結果は、クジラに関するいろいろなことを教えてくれます
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