観光課職員 のしごと

2025.10.20 紹介します○○のしごと
伊藤さんメイン画像
「鎌倉市の職員は、他の地域出身の人も思ったより多いんですよ」と語る伊藤真由さん=5月、鎌倉市役所
伊藤さんサークル画像

伊藤真由さん

神奈川県鎌倉市 観光課

「このまちでよかった」のために

鎌倉市は、歴史の舞台であり、海もある観光地。人気まんがやドラマの「聖地」もあり、国内外から多くの人が訪れます。

観光課は、市民の生活を守りながら、観光客にも快適な環境を整えるのが主な仕事です。パンフレットや、道順を示す掲示板などを、作ったり更新したりします。「夏は海水浴場に監視所を配置するのも仕事です」

伊藤さんが市職員になったのは、2022年。新型コロナウイルス流行による行動制限がなくなり、外国人をふくむ観光客が急に増え始めた時期です。「そのため、外国語版のパンフレットや、絵や図でマナーを伝える案内板も作りました」

一方で、鎌倉市は観光客が集まりすぎて地域によくない影響が出る「オーバーツーリズム」という課題があります。「一つの道に人が集中しないように別のエリアを回るコースを紹介したり、マナーについての案内板を設置したりします」

観光課には、住民から日々意見が寄せられます。観光客のマナーについて、住民が直接注意するのは難しいもの。「そこで、家の前にはれるポスターなどを市民に配布しています」。このように、観光客の「訪れてよかった」と、市民の「住んでよかった」を両立させるのです。

あゆみ

2000年
宮崎市生まれ。親の転勤で宮城県、神奈川県へと引っ越した
小学校時代
人見知りな性格。家にあった歴史まんがを読んで歴史に興味を持ち、やがて歴史が題材の小説を読むようになった。愛読書は『南総里見八犬伝』
中学校時代
コーラス部に所属。「体育が本当に苦手で、文系の科目が得意。特に歴史はやっぱり大好きでした」
高校時代 
日本大学藤沢高校へ。歴史的なアートに興味があり、美術部に入った
大学時代
東京都立大学人文社会学部に進学。西洋中世史を学んだ。博物館の学芸員になりたかったが、専門や求人などの関係から公務員試験も受けることに。鎌倉市の採用試験に合格した
2022年から現在
観光課に配属され、「日本遺産」担当になった。「夢だった学芸員ではなくても、市内の文化財・美術品をPRできる立場になり、結果的にやりたい仕事ができています」
やりがいや苦労

限界を乗りこえた先に

「パンフレットのおかげで気持ちよく観光できました」など感謝の声が、はがきで届くことがあります。「それを読んだ時に、やりがいを感じます」

伊藤さんは、鎌倉をめぐるストーリーが文化庁から「日本遺産」の認定を受けていることや、構成する文化財のPRも担当しています。

「もともと人見知りで、人前に立つことが苦手」でしたが、現在はイベントで大勢の前に立ったり、日本遺産のPRで講義をしたりします。「今も緊張しますが、意外にできるようになりました。自分で自分に限界を作らないことって大事ですね」

必要な道具は?

鎌倉市内にある日本遺産の構成文化財をはじめ、観光スポットについて聞かれた時に正確に答えるため、いつもパンフレットなどを持ち歩いています。

伊藤さんお仕事道具

なるためには?

地方自治体の職員になるには、地方公務員試験に合格する必要があります。試験内容は自治体によってさまざま。その多くは一般教養の筆記試験と面接で、論文試験を行うところもあります。

ただし、これは事務系の職員になる場合の話。資格が必要な専門職もあります。希望の課で働けるとは限りません。

面接では、市についての知識や思いを問われるので、愛をこめて思いを語れる人であってほしいなと思います。

思い出のしごと

目的地に向かう観光客が迷わないように案内板を充実させることも大切な業務です。

2022年に放送されたNHKの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、市内のあちこちがロケ地になり、ゆかりの地を訪れる人が増えました。中には場所がわかりにくいところもあったので、案内板を設置しました。

観光客が少しでも快適に観光できるようになったことがうれしかったです。

2025.8.4付 朝日小学生新聞
構成・正木伸城(ライター)

毎週月曜連載中の「教えて!〇〇のしごと」から記事を転載しています。
朝日小学生新聞のホームページはこちら