

加治屋百合子さん
ヒューストン・バレエ(アメリカ)所属見る人の心動かす舞いを
日本を代表するバレリーナとして20年以上活躍し、現在は世界的に有名なアメリカのヒューストン・バレエで、最高位の「プリンシパル」を務めています。
バレリーナといえば、おどりをイメージしますが、「仕事」はそれだけではありません。「おどりももちろん大事ですが、動画を見て役作りの研究もします。体の管理も徹底しています。ストレッチやヨガをして、本番で最高のおどりができるようにしていくんです」
作品によって、1か月で本番をむかえることも、準備に6か月ほどかける場合もあります。別々の舞台の練習を同じ時期に行うことも。ふだんの練習ではまず、けいこ場でバーに手をそえて脚上げ、ジャンプ、回転といったバレエの基本動作を1時間半ほどくり返し確認して、舞台のリハーサルへ向かいます。
バレエは頭、指先からつま先まで神経を使います。「リハーサルでは、まずふりつけを体に覚えさせてから、より良くするために何度もくり返します」。リハーサルは6時間以上におよぶこともあるそうです。
テクニックだけでは機械的な動作になってしまいます。舞台では役になりきって、観客に感情が伝わるようにすることも、とても大事なのだそうです。
- 1984年
- 愛知県名古屋市生まれ
- 小学校時代
- 名古屋市の小学校に入学後、8歳でバレエに出合う。その後、10歳の時に中国・上海舞踊学校に留学
- 中学・高校時代
- 練習にのめり込み、バレエが好きになったのは13歳ごろから。15歳でローザンヌ国際バレエコンクールに出場し入賞。その副賞でカナダ国立バレエ学校に1年間留学しました。上海舞踊学校は中学・高校の学業を修了したあつかいになるため、勉強もしました
- 2000年
- アメリカを代表するバレエ団「アメリカン・バレエ・シアター」の研修生となり、その年に入団。07年に、重要な役をおどるソリストに
- 2014年
- 7月にヒューストン・バレエに移籍。11月にプリンシパルに昇格しました。その後21年に、日本の芸術選奨文部科学大臣賞(舞踊部門)を受賞しました
- 現在
- 国内外の公演に出ながら、ワークショップの講師としても活躍中

自分だけの良さ のばしたい
いまはプリンシパルとして活躍する加治屋さんにも、なかなか役がもらえない時期があったといいます。「バレエは見る芸術。私はバレエに向いている体形ではなかったので、周りと比べてなやむこともありました」
体形や骨格は努力では変えられないけれど、それ以外は変えられるかもしれない――。そう考え、自分にしかない良さをのばそうとしてきたそうです。
「公演を見てくださった方の心を動かし、感動を届けられるダンサーでいたい。何か一つでも『これを得た』と思ってもらえたらうれしい。そのためにも、日々練習ですよね」
なるためには?
バレエは舞台の上ははなやかですが、それは一瞬で、ほとんどは地道な練習です。だから「好き」であることが第一。「好き」でないと続けられないと思います。
日本にはたくさんのバレエ教室があるので探してみてください。バレエ教室で基礎を身につけたら、バレエ団のオーディションに挑戦してみましょう。技術などのきびしい審査をへて、初めてプロとしての入り口に立つことができます。
もっと知るには
7月3~12日、ヒューストン・バレエによる「オープニング・ガラ」「ジゼル」の公演を東京と名古屋で行いました。興味のある人は検索してみてください。
〈画像は、「ジゼル」より、ジゼル役の加治屋さん(右)=2019年、アミタヴァ・サルカー撮影
ヒューストン・バレエ提供〉

おしごとあるある
舞台に出る前に、ゆかを3回コンコンコンとたたくのが私のルーティン。心を落ち着かせるおまじないです。
また、日本なら「がんばってね」と声をかけるような場面で、アメリカのバレエ団では「メルド」と言います。もともと「ふん」や「くそっ!」という意味。この言葉が使われはじめた当時は「幸運をいのる」と言うと逆にえんぎが悪いとされていたようです。ヨーロッパなら「トイトイトイ」などとも言います。
2025.6.2付 朝日小学生新聞
構成・正木伸城(ライター)
毎週月曜連載中の「教えて!〇〇のしごと」から記事を転載しています。
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