
遊具を作る人
「遊具」と聞くと、何を思い浮かべるかな。公園にあるすべり台やブランコなどの定番の遊具のほか、体力をつけたりバランス感覚を養ったりする遊具、全身を使って遊ぶ複合遊具など、いろいろな種類があるんだ。写真は、遊具の企画・開発をしているところだよ。(写真提供/株式会社コトブキ、撮影地は東京都港区浜松町)
安全で、子どもの想像力を育む楽しい遊具を生み出す
遊具が完成するまでには、設計から製造、現場への納入など、さまざまな工程があります。その大部分に関わり、遊具が現場に設置されるまでのルール作りから仕事の流れまで管理しているのが「企画・開発」の仕事です。遊具をプロダクト(製品)と考えるだけでなく、設置した地域を形づくる環境の一つになることも念頭において企画・開発をしています。

遊具やベンチなど製品を作るための設計図(図面)を作成している(撮影地=東京都港区浜松町)
最初は企画。企画の役割は、社会でどのような遊具が求められているかを調査し、イメージを作ることです。都道府県や市区町村などからの「遊具を設置したい」という相談に対し、設置する場所や希望、考えを聞き、要望に合った提案をします。
だいたいのプランが決まったら、開発や設計のチームが動きます。遊具の形や構造、細部のパーツなどをデザイン、設計します。図面や模型、3次元の立体データを用いながら、思い描く遊具を形にしていきます。

開発チームが模型を使って遊具の設計をする(撮影地=栃木県塩谷郡塩谷町)
企画・開発の仕事で大切にしているのは、そのときどきの流行を取り入れるのではなく、長く親しまれる遊具を作ること。子どもたちが夢中になれるもの、集団でも1人でも遊べるデザイン、コミュニケーション能力や想像力を育める「しかけ」を加えるなど、さまざまな角度から「楽しさ」を追求しています。
そして、「安全性」との両立は重要なポイントです。JPFA(日本公園施設業協会)が定めた安全基準(国土交通省の指針に沿ったもの)と独自のルールに沿って設計し、図面や3Dモデルを用いながら危険な箇所がないかチェックします。さらに試作品を製造し、試験と検証を重ねながら安全面を入念に見ていきます。
この試作品の検証には、安全に配慮したうえで、子どもたちに実際に遊んでもらうという大事な工程があります。企画・開発チームが中心となり、「危険な行為が発生しにくくなっているか」「企画した通りの動きや遊びができているか」「遊びに発展性や変化は起こっているか」など、安全性と楽しさの両面から子どもたちの遊ぶ様子を観察。複数の視点での確認を経て、ようやく遊具が完成します。

ロープで作られた山を登る「ザイルクライミング」やすべり台、飛び跳ねたくなる遊具など、たくさんの遊びの要素が含まれた複合遊具。子どもたちに遊んでもらい、楽しく安全に遊べるかを確認しているところ(撮影地=栃木県塩谷郡塩谷町)
近年、年齢や障害の有無などにかかわらず楽しめる、誰もが安心して遊べる「インクルーシブな遊具」も増えています。安全性を重視しすぎて楽しさがなくなってしまわないよう、両者のバランスを模索しながら遊具を作り続けています。
そんな企画・開発の仕事の醍醐味(だいごみ)は、「子どもたちが楽しそうに遊具で遊ぶ姿を見ること」。遊具をきっかけに新しい遊びや子ども同士のコミュニケーションが生まれる様子が見られると、遊具が社会の役に立っていることを実感できるといいます。
どうしたら遊具の企画・開発の仕事に就けるの?
遊具作りにはさまざまな分野の知識が必要です。例えば、幼児教育、発達心理学の知識は企画の仕事に生かしやすく、機械工学や材料工学、建築学などの知識は開発に役立ちます。専門分野を持ったり、得意な分野の勉強をがんばったりするといいでしょう。また、ワクワクするアイデアを考え、その実現に向けて必要なことを論理的に整理できる人が向いています。