
水力発電には「揚水式水力発電(揚水発電)」という方式があり、脱炭素に役立っているそうです。そこで水力発電の設備(プラント)を作っている日立三菱水力に揚水発電のことを聞いてみました。
- 水力発電の仕事
- 製造する仕事
- 社会のインフラを作る仕事
余った電力を使って水を汲み上げて貯蔵し、必要な時にその水を落として水車を回して発電する、という仕組み。
揚水とは、水を汲み上げること
揚水発電では、ダムを築き発電所の上部と下部に大きな調整池を作ります(下図)。そして、その間に作られる揚水発電所の中にポンプ水車と発電電動機を設置します。

電力が余るとき
余った電力を使って下部調整池の水を上部調整池に汲み上げ、貯めておきます(揚水)。
電力が必要なとき
上部の調整池から水を落として発電します。
この仕組みにより、揚水発電は水を利用した巨大な蓄電池の役割を果たしています。
揚水時は、水車が発電時と逆に回転するんじゃ!

これが揚水発電の仕組みだ!
【ポンプ水車】
ポンプと水車の両方の機能を持っています。

送電線から電力を得て、電動機(モーター)によりポンプを回して下部調整池の水を汲み上げ、上部調整池に貯水する。
【発電電動機】
発電機と電動機の両方の機能を持っています。

上部調整池から落ちる水の力を利用して水車を回し、水車と軸でつながる発電機で発電する。
揚水発電は再生可能エネルギーの未来を担っているよ
実は、電気は水道やガスと違って、大量に貯蔵することが難しいのです。そのため電気を作る量(供給)と消費量(需要)が、同じ時に同じ量となるように常に管理されています(同時同量の原則)。この原則が崩れると電圧や周波数が乱れて電気を正常に供給できなくなり、大規模停電を招く恐れも!
現在、地球温暖化防止のために、CO2を排出する火力発電を減らし、CO2を排出しない再生可能エネルギー(再エネ)である太陽光発電や風力発電を増やす動きが加速しています。しかし、太陽光発電や風力発電は「変動性の再エネ」と言われ、天候や時間帯などによって発電量が変動するため、同時同量の原則を維持する上では短所になります。
そこで、余った電気で水を汲み上げ、電気が必要なときに発電できる揚水発電を巨大な蓄電池として利用し、太陽光発電や風力発電と組み合わせることによってその短所を補えば、再生可能エネルギーの利用が進み、地球環境にやさしい電力システムの実現に近づきます。

揚水発電を支える発電設備

▲揚水発電用のポンプ水車。揚水時にはポンプとなって水を汲み上げ、発電時には水車になります

▲発電電動機は揚水時には電動機(モーター)になり、発電時には発電機になります
日本の揚水発電は世界第2位の規模で活躍中!
2022年時点の日本の揚水発電所は、全国で42地点、合計約2700万kWの設備容量で、日本の発電設備容量の約1割を占めています。また、これは世界第2位の規模を誇ります。CO2を排出しない変動性の再エネと揚水発電を組み合わせて活用することによって地球温暖化の防止と安定した電力供給に貢献します。揚水発電にはそのほかにも多くのメリットがあり、わたしたちの生活には欠かせない技術なのです。
揚水発電のメリット
- 大きな蓄電能力を持っている
- 環境にやさしい
- プラント寿命が60年以上と長い
- 成熟した日本の技術で安定稼働

揚水発電にはいろいろなメリットがあるんだね。
世界中のエネルギー問題解決に役立っています!
日立三菱水力株式会社
許斐翔太さん、中務拳斗さん、中尾 士さん(左から)
私は発電機や発電電動機を設計しています。発電所ごとに違う仕様に合わせて計画や設計をするのは大変ですが、完成した製品は迫力があり、大きな達成感を感じます。何より、社会を支える製品に携われることにやりがいがあります(許斐さん)。
水力発電プラントを動かすための制御装置を設計しています。プラントを構成する様々な機器を正しく制御するには幅広い知識が必要ですが、プロジェクトメンバーと協力して、お客様の要望通りにプラントが動いた時にはうれしさを感じます(中務さん)。
揚水発電プラントを作る計画を立てています。水の力を使って電気を作り、貯めることができる揚水発電技術は、日本や海外で活躍し、世界中のエネルギー問題解決に役立っています。クリーンなエネルギー作りに貢献できるのが喜びです(中尾さん)。
社会を支える製品に携われてやりがいを感じます。
