ヘアサロンでお客さんの髪を整えているあのひと、何してる?

2026.02.20 あのひと何してる?

医療用ウィッグ技術者がお客さんの髪を切っている画像

医療用ウィッグ技術者

髪の毛は、その人の個性であり、自信をもたらす原動力にもなる。でも、病気や治療によって髪を失うことがあるんだ。そんなとき、特別なウィッグ(かつら)を作る医療用ウィッグ技術者が頼りになるよ。写真は、医療用ウィッグを作るためにヘアスタイルを整えている様子。病院内ヘアサロンで働く技術者の仕事内容を紹介しよう。(写真提供/株式会社アデランス 撮影地はいずれも東京都品川区)

外見ケアだけではなく、お客さんに自信と笑顔を提供する


医療用ウィッグは、病気や治療による脱毛に悩む人などのために作られています。がんの治療に使われる抗がん剤や放射線治療の副作用、円形脱毛症による脱毛のほか、頭部の傷ややけどの跡を隠すためなど、さまざまな目的があります。


医療用ウィッグには、あらかじめ完成している「既製品(きせいひん)」と、その人に合わせて作る「オーダーメイド」があります。オーダーメイドを作るときは、お客さんの頭のサイズを測り、希望のヘアスタイルを聞いて、頭に触れる下地や髪の材質を提案します。ウィッグを着用したときのヘアカットも行い、自然な見た目や着け心地の調整まで担当しています。

技術者が医療用ウィッグを整えている画像

出来上がったウィッグを、お客さんにフィットするようにカットしながら調整する

ファッション用のウィッグとの違いは、お客さんが安心して使うための基準があること。そのため、医療用ウィッグ作りでは、着け心地が重要なポイントです。治療中のデリケートな頭皮の負担にならないように、メーカーが工夫して作った素材など、空気が通りやすく、ムレにくい素材を選んでいます。

 
髪の材質には、人工毛髪(じんこうもうはつ)と人毛があり、人工毛髪は、化繊(化学繊維。ポリエステル、モダクリル、ナイロンなど)でできており、スタイリングが簡単で崩れにくく、お手入れがしやすいという特徴があります。一方、人毛は人間の本物の髪でできており、自然な見た目と感触が魅力です。両者をミックスして使うこともあります。

医療用ウィッグ技術者の仕事道具の画像

人工毛や人毛は、質感や硬さもさまざま。ハサミは一般的な理美容ハサミと比べて少し硬く、すぐに刃こぼれしないつくりになっている

ウィッグを毎日使うと1週間~10日ごとにシャンプーが必要になるため、お手入れのしやすさも大切なポイントです。毛材(もうざい・髪の材質)の種類によって、お湯やドライヤーを使えない場合があるため、素材選びは慎重に検討します。


お客さんの多くは体の調子がすぐれず、日々の治療で心も疲れています。体調に配慮しながら、短い時間の中でヘアスタイルの要望などを聞き取るのは簡単ではありません。何気ない会話でリラックスしてもらい、話しやすい空気を作ることが大切です。

病院内のヘアサロンにある移動式理美容イスの画像

病院内のヘアサロンにある移動式理美容イス。病室のベッドからイスに乗ったままヘアサロンの鏡の前まで移動できるため、お客さんの体の負担を軽くできる

お客さんから一番多い要望は、脱毛する前と同じヘアスタイルにすること。例えば、多くのがん患者さんは、病気のことを周囲に知られたくありません。できるだけ外見の変化を抑えられるように調整して、気持ちの負担を軽くするのも重要な役割です。


脱毛がひどくなるにつれ、鏡が見られなくなる、笑顔が消えてしまうといったお客さんも少なくありません。そんな人たちがウィッグを着けると、うれしくて涙を流したり、外出を楽しむようになったりすることも。笑顔を取り戻した姿に、技術者は胸が熱くなるといいます。ただ見た目を整えるだけでなく、お客さんが自分らしく社会と関われるようにサポートすることを目指しています。

どうしたら医療用ウィッグ技術者になれるの?


美容の専門学校で、ヘアカットなどの知識や技術を学びます。美容師・理容師の国家資格を取得すると仕事に有利です。その後、医療用ウィッグを取り扱うウィッグ専門企業やヘアサロンなどに就職します。

協力/株式会社アデランス

取材・文/内藤綾子