大型船の前に立っているあのひと、何してる?

2020.02.28 あのひと何してる?

港湾荷役船内作業員(こうわんにえきせんないさぎょういん)・ギャング

乗用車や商用車を、北米・中南米・アジア・中東・ヨーロッパ・アフリカなどへ輸出する運搬用に、自動車専用船がある。そこへ数千台規模の車を積み込む作業を担当するのが、港湾荷役船内作業員だ。港湾荷役(こうわんにやく)は、港に一時置かれていた貨物を船に積み込む作業。「ギャング」とは、元はオランダ語の行進や通路だったのが、「港湾荷役船内作業員の1チーム」を意味する海事用語になった。映画などに登場する悪党の「ギャング」とは違うよ。(写真提供/日本郵船株式会社)

数千台の車両を、船に10㎝間隔で積み込む神ワザ


左右10㎝

ラッシャーが自動車を固縛

ギャングは24名ほどのチームで、リーダー、車両の誘導員、ドライバー、車両を固定するラッシャー、車両移動を整理するシグナルマンで構成されています。積み荷は、乗用車、フォークリフトや大型トラック、ブルドーザーのほか、コンテナ規格で収まらない大型貨物、車両のパーツ、ヘリコプター、電車など。貨物量が多いときは、4チームくらいで対応することもあります。

積み込み作業には配置プランが用意され、車両の向きや高さをそろえて無駄なスペースを作らず、寄港地ごとに降ろしやすいように調整されています。

まずは、岸壁に並ぶ車両を1台ずつ運転して船内へ入ります。プランに沿って、指定の区画に前進で進入、バックで方向転換後、指定場所に一発でピタッと駐車します。ドライバーの技術は、サイドミラーを閉じたままで、誘導員による笛の号令だけを頼りに、寸分のズレもありません。車両同士は、前後30cm、左右10cmという間隔しかない神ワザ!

秒単位で次々と停車させたのち、航海中に動かないように、ラッシャーがラッシングベルトで車とデッキを固定します。

横浜港や川崎港では、多いときで2400台もの乗用車を、4ギャングが7時間ほどで積み終えます。
 
船内作業は騒音が大きいため、作業員同士はしっかり声をかけ合ってコミュニケーションをとります。それが、車両を傷つけることのない安全作業につながるのです。傷だらけの車を送って海外からの信頼を失わないように、チームで日本の輸出を支えています。

どうしたら港湾荷役船内作業員(ギャング)になれるの?


港湾作業を担当する会社に入社後、大型・けん引・大型特殊自動車運転免許などの資格を取得します。しばらくラッシャーとして従事して、経験を積んだら自動車船ドライバーへといった段階を踏みます。

協力/日本郵船株式会社

取材・文/内藤綾子