ズラリ並んだコーヒーの香りを嗅ぐあのひと、何してる?

2019.11.29 あのひと何してる?

カップテイスター

ワインのソムリエ、日本酒の利き酒師のように、コーヒーにも専門家がいるんだ。カップテイスターというよ。写真は、買い付けたコーヒーを並べ、味や香りの評価をする様子。選ばれたコーヒーは製品化されて、カフェやスーパーなどで販売される。ホッと癒やされる奥深い味は、カップテイスターが生み出していたんだ。(写真提供/キーコーヒー株式会社)

1日350杯をテイスティングするコーヒーの専門家


コーヒーの原材料である生豆(なままめ)の品質を、産地や銘柄ごとに見極めるのがカップテイスターです。カップテストによって買い付けの合否、価格、量を決めるバイヤーでもあります。日本へ輸入される間に、味や品質に悪い影響を受けていないかといったことも確認して、豆の選定と焙煎(ばいせん、生豆を煎って加熱すること)の度合いを設定。どんな風味に仕上げるか、商品開発まで担っています。

 

品質チェックは、生豆や焙煎豆の外観や香りなどを丁寧に確認し、粗びきにしたコーヒーにお湯を注いでテイスティングするのが一連の流れ。

 
ブラジルをはじめ生産国は60カ国以上にのぼり、品種も多いため、数百種類のコーヒーがあります。その中から、1日60~70種類×5カップずつ、計300~350カップをチェック。

 
自分の感覚だけを頼りに、香り・コク・酸味・甘味・苦味・後味といった‶形のないもの″を評価するのは難しく、視覚や臭覚といった五感を研ぎ澄まさなくてはなりません。世界共通の円グラフ(コーヒーテイスターズフレーバーホイール)の基準を使用して、香りや味の特徴を評価することもあります。

 
より正確な評価をするために、日頃から辛いものなど刺激が強すぎるものは避け、空腹時の検査は判断を鈍らせる可能性があるので、3食しっかり食べることを心がけています。

 

生産者とコミュニケーションをとり、直接感謝を伝えてコーヒー生産の喜びをわかち合うことが、この仕事のだいご味です。コーヒー豆を売買する相場の動きはもちろん、相場に影響する情報も常に意識しながら、世界各国を飛び回っています。

どうしたらカップテイスターになれるの?


コーヒーの製造・販売企業に就職することが一般的。生産国とのコミュニケーションをスムーズにするため、英語やポルトガル語などが話せるとなおよいです。

協力/キーコーヒー株式会社

取材・文/内藤綾子