モックアップの中、有名な宇宙飛行士とあのひと、何してる?

2019.12.04 あのひと何してる?

宇宙飛行士(うちゅうひこうし)インストラクタ

地球の上空を回る国際宇宙ステーション(ISS)は、実験や研究を行う施設。日本は、そこに「きぼう」という実験棟を持っているよ。「きぼう」での仕事やリスク管理は、インストラクタが、ISSに搭乗する各国の宇宙飛行士に教えているんだ。写真は、インストラクタから説明を受ける大西卓哉飛行士だよ。(写真提供/©JAXA)

宇宙飛行士に「きぼう」でのミッションを指導する先生


現在、JAXAで訓練を実施しているインストラクタは15名で、「システム系」と「実験系」に大別されます。

 
・システム系……通信、電気、排熱、ロボティクス、保全、避難訓練、ロボットアームなど、「きぼう」の運用に必要な技量を訓練します。

 
・実験系……新薬、新素材、植物、動物など、「きぼう」で実験を行うのに必要な技量を訓練します。

 

たとえば避難訓練では、避難方法を教室で勉強し、大きなISSのどこに避難機材が設置してあるかなど、モックアップ(実物大の模型)を使って覚えてもらい、リハーサルを繰り返します。

 

また、カメラ技術の訓練も重要。オーロラ、火山、台風の目などの写真は、地質学や気象学の重要な資料になります。宇宙船のドッキングやランデブーの撮影は、異常の有無を確認する手がかりに。プロが使用する4Kハイビジョンといった高性能カメラ・ビデオ機材で、シャッタースピードやレンズ設定などを自在に使いこなせる技術を習得させます。

 

こうしたインストラクタの仕事は、訓練2割、デスクワーク8割。デスクワークの多くは、訓練教材の作成や修正です。膨大な資料(英語の資料も多数!)や、過去に「きぼう」へ行ったことのある宇宙飛行士から仕入れた情報を元に、すべて一から考え、資料はもちろん、模型を手作りすることも。訓練を間違えると、宇宙での事故や、実験結果に重大な影響を及ぼす「サイエンスロス」につながるため、常に真剣勝負です。

 

中でも心がけているのは、宇宙飛行士の身になって必要な情報を見極めること。NASAやロシアなどの他国で何を習い、どこに問題意識や興味を持っているか、追加でどういう情報を必要としているかを理解し、「ここを詳しく」という個別の要望を満たしています。

どうしたら宇宙飛行士インストラクタになれるの?


大学卒業程度の理工学的基礎知識が必要。円滑なコミュニケーションが可能な英語力も必須です。

協力/JAXA(宇宙航空研究開発機構)

取材・文/内藤綾子