海外留学の不安を吹き飛ばすのは「勇気」と「情熱」

2019.10.29 おしごと映画

しごとについての質問

「海外は日本より治安が悪そう。仕事や留学で外国に暮らすことになったら不安はないのかな?」(15歳・男子)

中山治美(なかやまはるみ)さん 

スポーツ新聞記者を経て、フリーの映画ジャーナリストに。映画サイト「シネマトゥデイ」ほか、多数の雑誌で連載。世界の撮影スタジオ、映画祭を取材中。

不安になるのもごもっとも


『ストリート・オーケストラ』

監督:セルジオ・マシャード 

出演:ラザロ・ハーモス、サンドラ・コルベローニ

DVD発売・販売元:ギャガ

©gullane

『長州ファイブ』

監督:五十嵐匠

出演:松田龍平、山下徹大、北村有起哉

DVD販売元:ケンメディア

©2006「長州ファイブ」製作委員会

誰だって住み慣れた街を離れて、見知らぬ土地で暮らすのは不安なもの。異国ならなおさらです。しかしそういう時こそ、その国の文化や情勢を映像で伝えてくれる映画の出番です。
まず、治安情勢を判断するのに最適な外務省の海外安全ホームページをチェックしましょう。
政府から渡航中止勧告や退避勧告が出ている国は論外。その他の地域でも、犯罪に巻き込まれそうな場所や地域に興味本位で立ち入らないのが賢明です。その一つが、経済的に極度に貧しい人たちが居住するスラム街です。


ブラジル映画『ストリート・オーケストラ』を見てみましょう。
本作はサンパウロ最大のスラム街で、荒れた生活を送っていた子どもたちに音楽で希望を与えた実話をモデルにしています。ここはギャングが牛耳り、犯罪行為が横行していた場所。劇中でも描かれているように、警察による銃撃で、17歳の女の子が誤って死亡する事件も起きました(劇中では少年)。その記憶が生々しいため、いくつかのシーンの撮影は別のスラム街で行われています。それでも住居も鉄格子付き窓が標準で、学校内の売店ですら盗難防止のため小さい窓ごしに接客。警備のものものしさに街の緊張感と、そんな環境で暮らさなければならない人たちの悲痛な叫びが伝わってくるようです。
ただし2019年10月現在、ブラジル自体は、先の海外安全ホームページによれば危険レベルは低いようです(一部に、危険レベル1が出ています)。映画のような草の根の取り組みが成果となって表れているのかもしれませんね。
 
では人はなぜ、わざわざへ海外へ行くのでしょう。
映画『長州ファイブ』が、俯瞰(ふかん)した広い視野で日本を見つめることの大切さを教えてくれます。
同作は近代日本を切り開いた井上聞多(馨)、遠藤謹助、山尾庸三、伊藤俊輔(博文)、野村弥吉(井上勝)の長州藩士5人の英国留学記です。
彼らは、外国人を日本から追い払おうという攘夷(じょうい)の気運吹き荒れる中、危険を顧みずヨーロッパへ向けて密航します。そこで日本の技術の遅れを目の当たりにするのです。攘夷どころか、国の発展のためには彼らに学ばねばと、鉄道や造船など英国の最新技術を日本に持ち帰るべく奮闘しました。きっと情熱が、あらゆる不安を吹き飛ばしてしまったのでしょうね。


いつかあなたにも、一歩踏み出す勇気を与えてくれるような対象が見つかるかも。
その日に備えて、いろんな国の映画を見まくってください。