白衣でスポイトを持つあのひと、何してる?

2019.10.29 あのひと何してる?

フレーバリスト(調香師)

食品を食べたとき、より「おいしい」と感じさせる“仕掛け”があることを知ってるかな? それが「香り」だ。食品の香りは、調香師によって作られているよ。調香師には、化粧品などの香りを作る「パフューマー」と、食品などの香りを作る「フレーバリスト」がいるんだ。写真は、香料会社の研究所で香りを調合しているところだよ。(写真提供/小川香料株式会社)

数千種類の香料から、おいしい味と香りをデザインする


フレーバリストは、食品の風味を引き立たせる「香り」を作るエキスパートです。お菓子やドリンク、酒や加工食品に使う香りを作るほか、ペットフード、子ども向けの薬、歯磨き粉などの香りづけもしています。

 

数千種類の香料原料の中で、最低1000種類以上を把握。必要な香料を選定し、緻密(ちみつ)なバランスで調合することで、高級感、スパイシー感、こってり感といったイメージを食品に植えつけることができます。たとえば、「フジという品種のりんごを使った搾りたてジュースの香り」を作る場合、100種類近くのりんごの香料を思い浮かべ、その中から20~30種類の香料を組み合わせて調合します。ジュースを試作し、香りと味の相性が合わなければ新たな香りを調合。この作業を10~20回繰り返して香りが完成し、りんごジュースに加えて製品となります。

 

香りのイメージを膨らませることが重要なので、日ごろからあらゆる情報を足で集めています。はやりのカフェを巡り、人気のあるドリンクの風味や味をチェックする一方で、あえて、おいしそうでない食品を口にすることも。さまざまな食品に接しながら感性を磨いています。

 

音楽の世界では「絶対音感」と言われる能力があるように、フレーバリストにも「絶対嗅覚(きゅうかく)」が必要とされます。常時、嗅覚のアンテナを立て、目にした食品の香りをかいだ瞬間に、香りの成分とレシピを思い描くことを繰り返します。このような努力の積み重ねで、イメージを表現するレパートリーが増え、だれもが「おいしい!」と笑顔になれる香りをデザインできるのです。

どうしたらフレーバリストになれるの?


化学など理系の大学や専門学校を卒業して、香料メーカーや食品メーカーなどへ就職するのが一般的です。修業期間は10年ぐらい必要。

協力/小川香料株式会社

取材・文/内藤綾子