誤解されてきた看護師の3K。本当の意味とは?

2019.08.28 おしごとBOOK

しごとについての質問

「看護師さんって優しくてすてき。忙しくて責任も重大というけど、続けられるのはどうして?」(13歳・女子)

<答えてくれる人>児玉ひろ美(こだまひろみ)さん

公立図書館司書とJPIC*読書アドバイザーのふたつの立場から子どもの読書推進活動を展開。幼稚園・保育園から中学生まで、お話し会やブックトークの実践とともに、成人への講座や講演は年100回を超える。近年は短期大学にて「児童文化」「絵本論」の講義を担当し、「2021・2022・2023年度ブックスタート赤ちゃん絵本 選考委員」でもある。著作に『0~5歳子どもを育てる「読み聞かせ」実践ガイド』(小学館)等があり、雑誌やWEB等でも連載中。

*JPIC(ジェイピック):一般社団法人 出版文化産業振興財団

同時に、すばらしい仕事であることを実感しているから


『おしごとのおはなし 看護師 すてきな3K』

著者:いとうみく
絵:藤原ヒロコ
出版社:講談社
価格:1200円(税別)

 

憧れだけではなく、責任の重さに不安を感じているあなたは、その仕事の意味を誰よりも感じているのでしょう。『すてきな3K』の主人公希子ちゃんのお母さんは、病棟の看護師です。クラスメートに「看護師は3K(危険、汚い、きつい)」と言われショックを受けます。なのにお母さんは「きつい、帰れない、給料安いもある」と得意げ。希子ちゃんは「お母さんは、なんで看護師なんかに……」と口にしてしまいます。
小学校中学年向けの楽しい作品ですが、中学生のあなたなら、巻末の「看護師のまめちしき」に目を通してから読んでください。お母さんのキャラクター設定など、より作者の意図を読みとることができます。
そして知っておいてほしいのは、看護師不足による「忙しさ」が医療事故の原因と結果になってはいけないということ。ひとりの看護師だけに命の全責任を負わせるわけにはいきません。そのために国がどんなことに取り組み始めているかも「まめちしき」で知れば、不安が希望に変わり、タイトルの「3K」にもうなずけることでしょう。

不安な患者さんの支えとなる存在です


『さくら坂』

著者:千葉朋代
出版社:小峰書店
価格:1400円(税別)

 

『さくら坂』の主人公、高2の美結は骨肉腫により右足切断の必要を宣言されます。美脚が自慢で将来はアナウンサーになって活躍したいと思っていた美結は、脚の温存を望みますが、それは再発のリスクを伴う選択になります。悩む彼女に担当の先生は問います。「みんなと同じであることは、生きることより大切なことだろうか」。そんな彼女の支えになったのは、担当の看護師でした。
実は作者の千葉さんは看護師。看護師だからこそ知っているつらい状況にある人たち。リアルなつらい現実。でも人は医学のみで助けられるのではなく、人によって助けられることがある。人でなければできないことがある。そのことを誰よりも知っている看護師だからこそ、書くことのできた作品なのでしょう。
人と寄り添うことを困難と考えるか、やりがいと考えるか。13歳のあなたが悩むのは自然なことです。そして、考える時間はまだまだあるのですよ。