山奥で虫取り網を担いだあのひと、何してる?

2019.11.21 あのひと何してる?

自然環境調査員

写真は、北海道大雪山系の山中で昆虫を採集している様子。「虫取りをする仕事なんて、楽しそう」って思ったかな? 遊んでいるように見えるけれど、環境を調査するのに必要な作業なんだ。みんなの周囲にある当たり前の自然は、自然環境調査員のこんな働きによって守られたものかもしれないよ。(写真提供/北開水工コンサルタント)

大規模な開発事業が行われる前に、環境への影響を調査


崖につくられたショウドウツバメの巣穴を調査しているところ

魚類調査のために、投網をして魚をつかまえることもあります

自然環境調査員は、「環境アセスメント調査員」「環境調査員」などとも呼ばれます。道路建設、河川整備、また鉄道、飛行場、発電所、廃棄物最終処分場といった大規模な開発が行われる際に、その事業を行う団体から依頼を受け、環境への影響を事前に調査して予測するのが仕事です。

大気に含まれる有害物質、工場から出る排気ガス、河川に流れる排水、建設現場から発生する騒音や振動、日本にすむ生物の生息・生育状況など、多岐にわたる調査や測定をします。「開発による環境への影響は?」「人々の生活に影響は?」といったデータをまとめ、依頼団体に報告。こうした調査や分析を行うことで、環境を保ちながら人々の生活も守っているのです。

たとえば、生物の調査では、植物、両生類・爬虫(はちゅう)類・哺乳類、鳥類、昆虫類、魚類などの分野があり、歩いて確認し記録するほか、道具(網・トラップ・センサーカメラ)を用います。昆虫の場合には、野原、樹林、水辺などさまざま場所を歩き、石をひっくり返したり、キノコを細かくほぐしたりして捕獲。捕獲したサンプルや調査したデータをまとめ、生物の確認地点や地形情報などから生息域を推定し、図面や航空写真に表します。

調査開始から報告書作成まで、費やす期間は1年ほど。生物の移植をした場合は、その後数年モニタリングを続けます。

希少な動物や植物の中には、生態がよく分かっていないものもあります。それらを守るために生息・生育環境を調べて移植を行い、その後の調査で元気に育っているのを確認したときには、やりがいを感じます。

どうしたら自然環境調査員になれるの?


大学、専門学校、農業高校などで、環境、生物、バイオテクノロジーなどの専門知識を学んだのち、研究所や環境調査会社に勤務して活動します。

協力/北開水工コンサルタント
取材・文/内藤綾子