おしごとはくぶつかん

そのみちのプロにく わたしのしごとみち«第1回»

ウェザーキャスター・気象予報士きしょうよほうし 木原 実きはら みのる さん

木原さんとそらジロー
プロフィール
木原 実きはら みのる さん
1960年東京生まれ。気象予報士・防災士。日本大学芸術学部演劇学科を卒業後、レポーター、声優、舞台俳優として活動。86年より日本テレビのウェザーキャスターになり、95年に気象予報士の資格取得。現在、日本テレビ「news every.」の天気コーナーを担当。分かりやすい気象解説とキャラクター「そらジロー」との掛け合いが人気。
気象予報士は「テレビで天気の予報をする人」というイメージですが、「気象予報士」とは主にどんなことをする仕事ですか
原稿を作成する木原さん
昼には日本テレビの報道局気象センターに入り、午後4時からの本番に備えて気象庁のデータを確認し、中継の原稿を書きます

気象予報士というと天気キャスターを想像する人が多いと思いますが、「気象予報士」は職業ではなくて資格です。

資格がなくても気象予報は誰がやってもいいんですよ。空を見て「明日は雨だね」なんて、みなさんも予報しますよね(笑)。

天気図は「上昇気流の予想図」「湿り気の予想図」などが高さによって100枚あるのをご存じですか。

天気は平面ではなく立体的で、大気の動きは目には見えないから観測するのが難しいんです。それを人工衛星や、上空の風の流れを調べるレーダーなどから、世界中の気象データをコンピューターに集約すると、地球全体の天気がほぼ予測できる。この中の日本のところだけを取り出して、「明日の天気です」と言っているんですね。

この気象情報は「効率よくコンクリート建造物を作りたい」「小麦の収穫を予測したい」など営利目的にも利用できるのですが、気象データが悪用されないよう、適切に管理できる人材の確保を目的にできた資格が気象予報士です。

原稿を作成する木原さん
昼には日本テレビの報道局気象センターに入り、午後4時からの本番に備えて気象庁のデータを確認し、中継の原稿を書きます
気象予報士の資格がなくても天気キャスターはできるんですね。
番組によって予想や解説が違う場合がある気がしますが?
気象データを確認する木原さん
気象データを元に、日本上空の風の流れが分かりやすいように矢印を書き込んで、CG画面作成の担当者へ指示を出します

アナウンサーが天気予報を読み上げる番組もあります。ただ気象予報士の方が、天気の仕組みを詳しく解説できる面はあるでしょうね。

予想した天気や解説が違うとなると気象予報士同士の対決です(笑)。「分かりやすいか」「面白いか」ということが勝負です。

僕が関わっている日本テレビは気象庁の情報を元に天気予報を出しますが、特別な認可を受けて独自の予報を出すテレビ局もあります。番組ごとに天気予報の内容は違うんですよ。そう思って「どっちが分かりやすいかな? どっちがあたるのかな?」と見ていると面白いでしょ。

数年前までは、朝と夕方の情報番組の天気予報をやっていたのですが、朝「雨は降りません。傘は必要ないでしょう」と言ったのに、夕方のニュースで傘をさしながら「朝の予報と違ってスイマセン。雨ですね」なんていうのはしょっちゅうです。

もし予報が外れたら謝るのが一番。迷惑かけたんだから(笑)。

みなさん、出かけるときに洗濯を外に干すかどうかは天気予報を参考にしますからね。

気象データを確認する木原さん
気象データを元に、日本上空の風の流れが分かりやすいように矢印を書き込んで、CG画面作成の担当者へ指示を出します
どんなきっかけで気象予報士になったのでしょう。
最初からウェザーキャスターを目指されたのですか?
ミーティングをする木原さん
天気予報に気象レーダーは欠かせませんが、目視と体感も大切。外に出ると空を見て空気を感じ取ります。職業病ですね(笑)

大学卒業後しばらくは俳優や声優をやっていました。事務所が日本テレビの近くにあった縁で、「ルンルンあさ6生情報」という情報番組のVTRレポーターをやることになって。「オシャレな若者の1日を3分で再現」とか、「ディズニーランドにスケボーで登場」など情報に合わせた小芝居をよくしていましたね。

半年くらいしたら、「ウェザーキャスターを募集しているよ」と言われて。「大丈夫ですか? 僕、文系ですけど」って言ったら、「合格してから考えればいい」というので、オーディションに受かったのが1986年。当時は「お天気ママさん」やアナウンサーが、気象協会が用意した原稿を読むことが多かった時代です。

ひとり、TBSに出向していた気象協会の森田正光さんが面白いことやダジャレを言うので人気でした。「参考にするべきは森田さん」と決めて、最初の1年は気象協会に通って、1時間くらい勉強してからテレビ局に行くという毎日。自分で原稿を書くようになったのは2年目から。気象予報士の資格を取得したのが95年です。

ミーティングをする木原さん
天気予報に気象レーダーは欠かせませんが、目視と体感も大切。外に出ると空を見て空気を感じ取ります。職業病ですね(笑)
気象予報士の資格試験の合格率は5%ですね。
難しい試験ですが、どういう勉強をされましたか?
木原さん
季節を感じてもらうためにウドを取り寄せ。若い人たちが知らないめずらしい食材や、行事などを天気と絡めて紹介します

範囲が狭いから大学受験より簡単だと思いますよ。「地学」の中の「気象」ですから、高校で理系を専攻した人なら1年勉強すれば受かると思います。ただ微分積分、対数くらいのことはわからないと。

加減乗除※だけでは、大気の動きは予測できません。そういう僕は文系ですからね。気象予報士の資格ができるっていうので「対数って何ですか」というレベルから、数学に詳しい人について一生懸命に勉強しましたよ。

資格試験までの1年くらいは徹夜の連続。1回目は落ちて、2回目で受かりました。「気象衛星ひまわりの雲の見方」「衛星写真から低気圧を推測する」というようなことも試験に出るんですが、これは天気キャスターとして知識があったから楽でした。

木原さん
季節を感じてもらうためにウドを取り寄せ。若い人たちが知らないめずらしい食材や、行事などを天気と絡めて紹介します
卒業後、しばらく演劇をやっていらっしゃいましたが、
それが役立ったことはありますか?
撮影中の木原さん
中継の背景が建物なので、見学者の持ち物などを紹介して季節感を出します。寒い日はそらジローがダウンを来たり耳あてをしたり

演劇は気象予報をするには関係ないようですが、プレゼンターとして役立っていますね。テレビの天気予報ってプレゼンなんですよ。「明日は雨です。なぜかというと……」と言いながらレーダーを出したり、天気図を出したりして分かりやすく、面白く解説しますが、これってプレゼンです。プレゼン力に演技力は非常に有効ですね。

例えば、そらジローが生きているように見せるために、「なになに?」って耳を傾けて、「そらジローが心配していますよ。雨でしょうか。予報図を見ましょう」なんてね。本番前に打ち合わせをするんです。「5秒したらトントン叩いて」って。「木原さんだけにはそらジローの声が聞こえるみたい」ってことになっているんですよ。僕一人だとできないですね、そらジローを相手にした芝居なんです。ネットの天気予報との違いはここにあります。面白くないとね。

撮影中の木原さん
中継の背景が建物なので、見学者の持ち物などを紹介して季節感を出します。寒い日はそらジローがダウンを来たり耳あてをしたり
「気象予報士になりたい」という子どもがいたら、どんなアドバイスをされますか?

日本には四季があり、外国と比べて天気のバリエーショも豊富。砂漠の天気なんて「晴れ・暑い」くらいですから。日本ほど天気に関心のある国民もいないでしょうね(笑)。

もし気象に興味があるなら、気象予報士は資格なので、その資格を何に使いたいかをよく考えてみてください。「お天気キャスターとしてテレビに出たい」ならアナウンサーになるという道もあります。

「日本の天気をもっと知りたい」なら気象大学校を出て気象庁に入って研究を続けるという道、「船が好きで海難事故を防ぎたい」なら海上保安庁に入るという道もあります。

どんなことに生かしたくて気象予報士の資格を取りたいかが大事なんですよ。

加減乗除かげんじょうじょ
加法(足し算)、減法(引き算)、乗法(掛け算)、除法(引き算)のこと。
気象予報士:
防災情報と密接な関係を持つ気象情報が、不適切に流され社会に混乱を引き起こすことのないよう、気象庁から提供される高度な予測データを、適切に利用できる技術者を確保することを目的として1994年度に導入された気象予報士制度。気象予報士となるためには、年に2回実施される気象予報士試験に合格し、気象庁長官の登録を受けることが必要。
取材・文/米原晶子  写真/村上宗一郎

そのみちのプロにく わたしのしごとみち記事一覧きじいちらん

一覧へ戻る