子どもたちのため立ち上がる大人って誰?

2019.07.01 おしごと映画

しごとについての質問

「子どものために何かしたい。学校の先生以外に、何か仕事がありますか?」(10歳・女子)

<答えてくれる人>中山治美さん(なかやまはるみ)

スポーツ新聞記者を経て、フリーの映画ジャーナリストに。映画サイト「シネマトゥデイ」ほか、多数の雑誌で連載。世界の撮影スタジオ、映画祭を取材中。

子ども=未来のためにできること、すべきことはたくさんある


『河童のクゥと夏休み』
販売元:ソニー・ミュージックソリューションズ
発売元:アニプレックス
価格:DVD 3800円(税別) Blu-ray 4800円(税別)
© 小暮正夫/「河童のクゥと夏休み」製作委員会

『TOMORROW パーマネントライフを探して』
発売元:ミッドシップ
販売元:紀伊国屋書店
価格:DVD 円(税別)
©MOVEMOVIE - FRANCE 2 CINÉMA - MELY PRODUCTIONS

豊富にございますよ。
まずは子どもたちの情操を育む児童文学作家はいかがでしょう?
原恵一監督のアニメーション『河童のクゥと夏休み』は、児童文学作家・木暮正夫さんの小説「かっぱ大さわぎ」と「かっぱびっくり旅」がもとになっています。原作小説を脚色していますが、河童のクゥと少年・康一の友情物語は胸を熱くし、夢や空想を膨らましてくれます。これぞ児童文学のだいご味です。
 楽しいだけではなく、子どもたちの成長のために大切なことも示してくれます。本作の場合、康一が偶然拾った化石からクゥが発見されます。クゥはどうやら江戸時代からよみがえった様子。そこから康一は、ふだん自分たちが何げなく暮らしている街は、何百年も前に暮らしていた人たちから受け継いできたのだということを実感します。すると見慣れたはずの街の景色も自然も、いとおしく思えるはずです。
 また児童文学にはよく河童のような想像上の生き物や妖怪などが登場しますが、これは私たちに目に見える世界だけが全てではないということを教えてくれます。森にはクゥのような河童が楽しく暮らしているかもしれないし、家には座敷童(ざしきわらし)が住んでいるかもしれない。そう考えると、この地球を人間たちだけが好き放題やって暮らしていいのかな?と思いません? 私たちは植物や動物、妖精に妖怪etc……いろんな命と共存しているのですね。
でも大人になって日々の忙しさにかまけていると、そういう大事なことを忘れがち。だから原監督は映画版で、人間の恐ろしさを原作よりも強調して描いています。劇中で、クゥを好奇の対象としてしか見ない大人たちの愚かな姿をまざまざと見せつけられると、アラフィフの筆者などは己の汚れた心を猛省させられます。
というわけで、原監督のようなアニメーション作家もステキな職業ですね。宮崎駿監督しかり、多くのアニメーション作家は子どもたちのために作品を作っているそうです。
もう一つ紹介するのは、フランスのドキュメンタリー映画『 TOMORROW パーマネントライフを探して』です。本作が作られたきっかけは、フランスの女優メラニー・ロランが、学術雑誌「ネイチャー」に掲載された論文内容に触発されたところから始まります。そこには権威ある科学者21人が「私たちが今のライフスタイルを続けていたら人類は滅亡する」と書かれていました。母親になったばかりのメラニーは子どもの将来を案じ、解決策を求めて世界中をリサーチします。
項目は大きく、農業・エネルギー・経済・民主主義・教育の5つ。二酸化炭素の排出量を目指した有機農業に、街や企業ぐるみでリサイクルに力を入れているところもあれば、アイスランドのように国の破綻を救うため市民が立ち上がった例も取り上げられています。メラニーしかり、ここに登場する人たちは皆、よりよき社会を目指したのです。
神学者マルティン・ルター(*諸説あります)の有名な言葉があります。
「明日世界が終わるとしても、今日私はリンゴの木を植える」。
政治家であれ、農家であれ、今ある資源や財産を継承していくことを考慮した仕事は全て、未来の子どもたちのためになると思いますよ。